肉体と精神

 西條6-B、沙羅撃破後(真悠の使用率高)の真悠、ホシミ5-C開幕のマイハの台詞。

>いけない……姉さんの生命維持装置にまで影響してる……。このままじゃ……。
>この様子だと、6時間は耐えられないということみたいね。一般的に、精神体だけの存在では、人は生きられないといわれているからね。

 生命維持装置が付いているにも関わらず6時間は保たないらしい。空腹とか排泄とかいう以前の問題である。
 また「人は精神体だけでは生きられない」というのは変えられない事実として認識されているようなので、生命維持装置がそれに抗うための装置であるということは少し考えにくい。

>まずいわね……。マイハのナノマシンが消えていっているわ。

 ホシミ6-B、沙羅撃破後(ツバサの使用率高)のサポートの台詞。状況は悠莉と同様。生命維持装置も破損していると考えて間違いないだろう。
 この辺りから、生命維持装置というのはDrive-INした者の精神をそのままの形で留めておくための装置なのではないかと考えられる。
 無理矢理引き剥がしてDrive-INさせた精神は、何らかの対策を取らないと霧散してしまうのだろう。バニシングゴーストにおける肉体と同じ。
 精神を維持する装置が作れるのであれば肉体を維持する装置も作れるのではないかと思わないでもないが、そもそも肉体をIllnetの中に引き込むことも出来ないのだから作れる訳がない。改めて沙羅のデタラメさに驚くばかり。

 ちなみに、羽板および西條のBエンドのCGを見れば分かるが(常識的に考えても分かるが)現実世界にある肉体は精神が無くても霧散してしまうようなことはない。
 それなのにIllnetに引き込まれると霧散してしまうのは、肉体が現実世界以外を想定して作られていないためである。
 ゲーム内の話ではなく一般論だが、現実世界で幽霊が発生するのは精神も現実世界では霧散しない(こともある)ためだろう。
 つくづくIllnetは人に辛い世界である。

 次。

>無理……よ。既に私の肉体が、現実にないもの。人は精神だけでは、成り立たないのよ……。

 西條6-C、特殊ワーム撃破後の光紗の台詞(共通)。光紗がバニシングゴーストに遭ったのは10年も前のことで、どうして今でも生きているのだろうと疑問に思った人は少なくないはず。理由も一切明かされていない。
 想像しか出来ないが、アイギスが関わっていたのは間違いないだろう。

>三日前に、わたしは神月光紗に会っている。

 西條5-Cアイギス戦前のアイギスの台詞。沙羅と一緒だったかどうかは不明。
 アイギスは沙羅のサポートやメンテナンスを担当しているので、バニシングゴーストのメカニズムを理解している可能性がある。
 沙羅と違いAHCに制約(もしくは能力的な限界)があるため実行は出来ないが、仕組みが分かるのであれば治療(肉体を再構成して精神とくっつける)も出来ると考えるのはおかしいことではない。
 アイギスが直接光紗に対策を施したかアイギスが教えて光紗が自分でどうにかしたのかは永遠の謎であるが、少なくとも手をこまねいて見ていたということはないだろう。現在の守護の対象であり、元々のマスターでもあるのだから。

 こうして考えると、沙羅、アイギス、光紗が健在ならIllnet上での不老不死も現実味を帯びてきそうである。どう頑張っても後ろ2人に未来がないのが悲しい。
 光紗はともかくアイギスは複数の双子が同時進行すれば何とかなりそうな気もするが、所詮あり得ないIFである。

 次。

>達成感と、ある種の高揚と共に、マイハは世界と同化していった───。

 マイハCエンドの冒頭。ツバサの体を借りていたマイハが、Illnetに飲み込まれていくシーン。
 ナノマシンのおかげで精神が霧散することはなく、その後実体化出来るようになる。そしてツバサと再会するのだがここでは割愛。
 奇跡と片付けるのは容易いことだが、よく考えれば理由は綺麗に見えてくる。

 4年前に臨床試験に失敗した際、マイハの精神はツバサの中に宿った。だから、心の中でツバサと会話が出来ている。
 原因は、同じナノマシンを2人が使用していたことだろうか。

 そしてCエンドでは、マイハの精神はIllnetを依り代にすることになる。SEQUELにおいてIllnetのことが手に取るように分かるのはそのため。自分の体のことなのだから分かって当然である。
 Illnetへとうまくシフト出来た要因は、ナノマシンが橋渡しになったからで間違いないだろう。ここではもうツバサは関係無い。
 マイハBエンドで2人が幽霊と呼ばれるようになるのも同じ理由。Cエンドのようにはっきりと実体化出来ないのは、沙羅の自爆に巻き込まれたツバサを修復するのにマイハのナノマシンを使ってしまったからではないだろうか。

 光紗が語っているように、人は精神だけでは成り立たない。というよりは何かを依り代にしないと精神が維持出来ない。
 つまり、精神がうまく宿る依り代さえあれば肉体は必要無いとも考えることが出来る。
 マイハのように精神の依り代を肉体からIllnetに移し変えられれば、Illnetの中で永遠に生き続ける事も出来るかもしれない。100年程で朽ちてしまう肉体と違い、Illnetは永遠に修理・改良を続けることが可能なのだから。
 マイハという実例がある以上、肉体をIllnetの中に引き込むよりは精神の依り代をIllnetに移す方が現実味がありそうである。尤も、

>最近、すごく眠くて起きられなかったりするんだ。

 マイハのIllnetライフも順風満帆とはいかないようであるが(SEQUELホシミ冒頭より)。

 おまけ。

>一つの肉体では、複数の精神を同時に宿すことを許容できないのではないか……。
>でも、わたしの肉体には、ナノマシンという特殊な補助がある。
>その補助が、わたしの存在を許容している、と。


 ホシミ5-B冒頭のマイハとツバサの台詞の抜粋。1つ目の言葉が真であるかどうかは結局謎のまま。
 というのも、マイハの精神は全てがツバサの中に入っている訳ではなく、一部がIllnet上に移行しているためである。マイハAエンドでマイハがコンピュータネットワーク上で観測されるのはそのため。
 この時ツバサの中のマイハがどうなっているかは不明。心の中とコンピュータ上の両方から声が聞こえたりするのだろうか。
 もしかしたら、Cエンド以外でも時が経てば同じようなことになるのかもしれない。
 自然とそうなっていくのか、マイハが居ることに耐えられないツバサが無意識に追い出してしまうのか、マイハが無意識に出て行ってしまうのかは分からないが。

>ホシミ マイハは、マスターと同じ世界が見え始めたか……。

 ホシミ6-C、2人でアイギスを撃破した後のアイギスの台詞。この辺りからもマイハが人間の枠をはみ出しつつあることが窺える。